創業の背景
(株)レックアイ代表取締役 鈴木 徳之
前職で培った専門分野/「事務改善」と「IT構築」を武器に
不動産業を事務整備・IT化という視点で評価してみたいと思います。
前職(株)大京はマンション分譲26年連続日本一の実績があり、年間供給戸数は約8,000戸に及びます。バブル期は実に15,000/年の契約がありました。
事務手順として、マンションの売買契約が成立しますと、まずは顧客台帳システムへ登録し、それを元に売買契約書や重要事項説明書、保証証書、領収書などを出力し、契約に臨みます。
そして契約が終了しますと、契約終了の確認処理があって、その処理をすると、自動的に預り金や前受金の伝票が起票される仕組みになっています。
昔はコンピューターシステムも今ほど稼働率が高くなく、よくシステムダウンが起きたりしていました。私はシステム部門に所属していましたので、その都度、各販売部門にシステムダウンのお知らせを電話で行っていました。その際のお詫びの言葉は、「契約書を手で作成しておいてください。システムが改修したら後付けで入力お願いいたします」でした。
「不動産業は営業が命」。その中でシステム化を模索
ある日、銀行から出向してきた部長さんと銀行事務と不動産事務の比較をしたことがありました。
部長は「銀行は初めから手作業を前提には仕事(例えば記帳事務や残高管理など)を考えていないので、業務と事務(=システム)が表裏一体であり、業務がGOを出しても事務がNOなら仕事が始まらない」というような主旨のお話をされました。
その話を受け、先にあるような実態をお話しし、「不動産業は営業が命、事務は手で回せるし誰でもできるもの」と主流の人材は考えている──という実態を告げました。
年間1万戸の契約は30件/日であり、約2,000名(当時)の社員がいたので、30件を手作業で処理しようと思えば確かに回ると自分でもその時合点がいきました。
当時は営業部門が会社の主流であり、営業部門純粋培養で、ジョブローテーションに組み込まれるのは副支店長や支店長になってからであり、事務処理に関してWHAT(何を)は頭で理解できても、HOW(どのように)を実体験してきた営業幹部が当時はおらず、新しい業務を構築・整備したり、新しい組織を設立したりする際、事務手順やシステム整備の準備期間を織り込んでもらえず、非常に苦労しました。
そのような環境下での、そのバランスを取り「業務改善」のニーズがひとたび発生したら、即時に、それに呼応するように「事務政策」を提供できるように、そのためのノウハウ・事例の蓄積、システム開発体制の整備、業務政策サイドが納得できるチェンジマネジメントの体系化に関して、技を磨きました。
退職するまでの直近3年間の経験/進めていく方向は正しいことを確信
もうひとつの原体験は、退職するまでの直近3年間の経験です。
前職でのIT化も後進に任せストック事業の拡大という新たなるミッションを受け、様々なビジネスの展開を試みました。しかし、持続的な拡大を図りつつ、効率よく収益をあげる事業部門の確立となると、そのシーズ(種)を見出すことさえ、非常に困難を極めました。そして、ある結論に辿り着きました。ストック事業の基礎はマンション管理業にあるということです。
この事業モデルのIT化を通じてストック事業拡大の橋頭堡を築くことが、一番の近道であるとの考えに至ったのです。早速、大京管理(株)に出向させてもらい、マンション管理営業(業界ではフロントと呼びます)のエキスパートをパートナーとして迎え入れ、2人でマンション管理業のIT化に着手しました。
ところが不動産業とは比較にならないほど複雑な手順や慣習が絡み合っており、マンション管理業のIT化以前に、業務内容を一から紐解く抜本的な改革が必要であることがわかりました。
そこで、マンション管理業とは何か?どのようなサービスを提供することによって誰から対価を得て、その顕在的な差別化要素は何か?そして恒常的収益の安定化と持続的事業の拡大のためには何をすべきか?それらを定義し、自己改革を推進する「経営改革委員会」を発足させることになりました。
委員長に大京管理(株)の社長、事務局長に私が就任し、委員会、事務局の二極体制で経営改革が開始されました。
経営の抜本的改革・活動基準原価計算・目標達成最適化などを学ぶ
同業他社のベンチマーキング(経営の抜本的改革を進めるため、業種・業界・国籍にこだわらずに優れたパフォーマンスを実践している企業)やABM(Activity Based Management/活動基準原価計算)、BPR(Business Process Reengineering/企業活動におけるある目標=売上高、収益率などを設定し、それを達成するために業務内容や業務の流れ、組織構造を分析、最適化すること)などを駆使して、収益の改善や、事務整備にある程度の区切りを付けましたが、非常に未達成感が残る仕事になりました。
具体的には、管理組合に対してのサービスと対価の関係を客観的に整備できなかった、事務に哲学を埋め込めなかった、既存システムに手足を縛られ全業務を対象としたIT化を進められなかった──などです。
進めていく方向は正しいことを確信していましたが、自分が理想とする「あるべきマンション管理業」「あるべき管理組合」を実現するためには、組織の一員としては、その活動に限界を感じ、既存の枠組みの外から、もう一度、マンション管理業の経営改革、IT化というテーマを追求し直してみようと考えたのが、起業への大きな動機付けとなりました。
これまでのノウハウを活かして広く“住産業”発展のために尽力
大京グループではのびのびとやりたい仕事にチャレンジさせてもらい非常に感謝しております。 いろいろな関連会社や部門があり、不動産関連はもちろん、その他様々な業務の構築やIT化の仕事を経験させていただきました。ReCI(レックアイ)は、これらのノウハウを活かして、大京グループを外から応援するとともに、広く“住産業”発展のために尽力し、日本経済の中でも不動産業、“住産業”の地位の確立に少しでもお役に立てればと考えている次第です。